◎淡路島で愛されるしばえもん狸
「狸」という漢字に「里」が入っているように昔から人里の近くに暮らしていますが、世界的にみるとアジアの一部だけに生息している実は珍しい生き物なんだとか!
狸と聞いて多くの方がイメージする縁起物の「信楽焼」は、「た(他)」「ぬき(抜く)」=「他を抜く」という意味で商売繁盛のシンボルとして店先に置かれるようになりました。焼き物の狸と実際の姿かたちの違いに驚いた方は多いはず。そんな狸の民話がミュージカル『福来たる~あわじゑびす座狂詩曲~』に登場するので簡単にご紹介しましょう。
●「芝右衛門狸」あらすじ
かつてお城の城下町として栄えた淡路島の中央にある洲本市・三熊山のてっぺんに芝右衛門(しばえもん)という愛嬌者の大だぬきが住んでいました。三度のご飯より芝居が大好きで、お腹は大太鼓のよう。よく晴れた月夜には光り輝く海へ向かって「ポンポコポンポコ」と陽気に腹鼓を打ち、洲本の町の人たちにも愛される狸でした。
時には人間に化けて木の葉のお金で買い物をするような悪戯もしましたが、一方で夜道に迷った旅人を案内したり親切な行いもしていたので誰からも憎まれず親切にされた人々はお礼として一升徳利を収めました。
ある時、芝右衛門は浪速(現・大阪市)の中座で面白い芝居があると聞き、人間に化けて浪速へ乗り込みます。木の葉のお金で木戸を通り、すっかり中座の芝居が気に入った芝右衛門は毎日毎日通いました。そのうち、木戸番のおじさん達は毎日銭の中に木の葉が混ざっているのを見て「狐か狸の仕業に違いない!」と思い、犬を3匹連れて潜ませることに…
何も知らない芝右衛門はその日も芝居を楽しんでいたところ、見張っていた犬に見つかりあれよあれよと狸の姿に戻ってしまいます。洲本の人達であれば笑って許されたかもしれませんが、ここは芝右衛門を知らない浪速の芝居小屋。悲しいことに犬を連れた人々に追い回され命を落としてしまいました。
しばらくして、近頃聞こえなくなった芝右衛門の腹鼓に町の人たちが心配していた頃、浪速の芝居小屋で大きな狸が殺された噂が届きます。「それはきっとあの愛嬌者の芝右衛門に違いない」と人々は心から悲しんで口々に彼の死を惜しみました。
芝右衛門の死後、中座ではぱったりとお客さんが入らなくなってしまい「芝右衛門を殺した祟りだ」と噂が立ちます。中座の人たちはえらいことをしてしまったと、芝居の神様として芝居小屋に祀ったところしばらくしてまた客足が良くなりました。
●「芝居の神様」になった芝右衛門
芝右衛門が中座に祀られ「繁盛の神」「人気の神」として多くの役者たちから信仰を得るようになり、その後芝右衛門の里帰りと称し洲本市に芝右衛門の祠が建てられました。現在では芝右衛門の祠は三熊山頂上の洲本城跡に近くにあり、芝居好きであった芝右衛門の伝説から今なお芸能人の参拝が多いです。中座に祀られていた「柴右衛門大明神」も2000年に里帰りし、現在は洲本八幡神社に祀られています。
●様々な説も芝右衛門の楽しみのひとつ
芝居好きの狸ということで“芝”右衛門と書かれていることが多いですが柴の葉を使って化けるということから“柴”右衛門と表記されていることもあります。また、洲本の三熊山が定説となっていますが淡路市の佐野や由良の掛牛山、鳴門の堂の浦などの記述も。佐野には“柴右衛門公園”があり芝右衛門一族が祀られています。
ストーリーも地域や文献によっていくつかの説があります。犬に殺されるという筋は避けられ、洲本に戻って穏やかに暮らすように書かれた本などもあり、伝承で伝わる民話が歴史とともに変容していく様が芝右衛門の話からも見られます。
●芝右衛門は日本三名狸!他の狸はどちらに?
淡路島の芝右衛門狸、新潟・佐渡島の団三郎狸、香川県の太三郎狸が日本三名狸に数えられています。団三郎狸は佐渡の狸の総大将。度々人間を騙していたものの悪さをするばかりでなく、困った人にはお金を貸したり数々の伝承が残っています。太三郎狸は瀕死のところを平重盛に助けられ、恩義から平家の守護を誓った狸の子孫といわれており『平成狸合戦ぽんぽこ』のキャラクターモデルになったことでも知られています。
四国には多くの狸にまつわる伝承が残されており、全国でも珍しい狸を祀った神社仏閣で厚く信仰されています。その一方でいたずらを繰り返した狐たちは弘法大師によって四国から追放されてしまったということで「四国に狐なし」という言葉も。狸の習性が一夫一妻制ということもあり夫婦円満、家庭円満、子宝、縁結びの神様としても祀られ、全国から参拝者が訪れます。
●ミュージカルと一緒に歴史探訪!
芝右衛門の故郷であり洲本城が築かれた三熊山は、洲本市街地にそびえる標高133mの小高い山。天気の良い日は洲本市街のみならず大阪湾を一望でき穴場観光スポットです。山全体が瀬戸内海国立公園に属する自然公園で原生林に覆われ、世界で洲本市と大阪市豊能町でしか発見されていない大変稀少な植物「シノミノヤブムラサキ」をはじめ、珍しい植物が多数自生する自然の宝庫でもあります。
そんな三熊山の山頂に築かれた洲本城は現在も西日本最大級の城郭の遺構が数多く残っており、中世の山城を今に残す貴重な学術資料として国指定史跡に挙げられています。
明治維新により、洲本城は廃されましたが天守台には1928年(昭和3年)に昭和天皇御大典記念として鉄筋コンクリートで建設された日本最古となる模擬天守閣があります。本丸の石垣、大石団、全国で3ヵ所しかない上下の城を繋ぐことで防御力を高めた「登り石垣」も見ることができます。
また、淡路島では芝右衛門の一族を「洲本八狸」と称し、洲本の街中に8体の石像が点在しています。それぞれ異なるご利益があるそうなのでミュージカルを楽しんだあとはかつての城下町を歩きながら探すのもおすすめです♪
●三熊山・洲本城址へのアクセス
〒656-0023 兵庫県洲本市小路谷1272-2
車:「洲本IC」より車で15分
バス:「洲本バスセンター」より徒歩25分
公演詳細は<こちら>
敗戦から数年後の淡路島。経営難で存続に苦しむ芝居小屋「ゑびす座」に商売繁盛の神様・えびす様がやって来る⁉ 劇団四季出身俳優陣を迎えておくる、笑いあり、涙ありの情熱ミュージカル!
[時 間]
各回 14:00 開演(13:30開場)約90分予定
[出 演]
坂元健児/近藤真行/柳瀬亮輔
山根千緒里/石坂光/五十嵐広大/堂元晴近/横田爽磨/源六朋樹
金森なつみ/木村くるみ/原萌々花/長岡美地留/荒木心/田野清香/中川ひかる
[会 場]
「青海波 ‐SEIKAIHA‐」内 劇場 波乗亭
[問い合わせ]
劇場 波乗亭 TEL 0799-70-9020
一般 5,500円
学生(小中高)2,000円
<ご購入・ご予約>
◎teket(テケト)<https://teket.jp/6095/32682>
◎イープラス<https://eplus.jp/sf/detail/4059900001>
icanca会員の方、各種クーポンをお持ちの方は以下よりご予約ください。
◎RESERVA<https://reserva.be/awajiartandculture/>
◎TEL[劇場波乗亭]0799‐70‐9020(10:00~18:00 ※木曜定休)
[アクセス]
青海波-SEIKAIHA-
〒656-1723 兵庫県淡路市野島大川70
TEL:0799-70-9020
[お車]神戸淡路鳴門自動車道 淡路ICより約10分、北淡ICより約15分
[高速バス]神姫バス・北淡路西海岸ライン「野島大川(青海波前)」にて下車、徒歩3分
(各線三ノ宮駅より約55分、JR舞子駅より約25分)
[高速船]各線明石駅から淡路ジェノバライン乗船、岩屋港のりばよりシャトルバスで約20分
別ページ<公共交通機関で劇場波乗亭に行こう!>