このシリーズでは、劇場波乗亭にて7月1日(土)より公開のミュージカル『淡路の月に誓う』がもっと面白くなる、作品の紹介をいたします。今回は、見習い武士と水軍衆たちが目指した「波除(なみよ)け島」についてお送りいたします。
現在の神戸市兵庫区にあったとされる大輪田泊。港の西には和田岬、北には六甲山系があり、風を防いでいましたが、南東からの風は遮るものがありませんでした。そのため、船が難破したり、港湾施設が壊れたりと、港として機能させるには難しい状況でした。
大輪田泊で、当時の中国である宋との貿易を進めるため、清盛は、南東側に防風・防波のための島をつくる工事を進めました。
しかし、今のように重機が無い時代に、土砂を埋め立てて人口島を創るというのは、まさに”神々が成した業”でした。土砂を埋め立てても、あと少しのところで潮に流されてしまいます。工事が難航する中、陰陽師は「普請を成就するには、海に潜む龍神の怒りを鎮める必要がある。そのためには、30人の人柱を供えるとよいだろう」と清盛に進言します。人身御供の儀式をなんとか避けたかった清盛は、石のひとつひとうに一切経をしたため、その石を埋め立てに使いました。そのことから、完成した波除け島は別名「経ヶ島(きょうがしま)」ともいわれています。
完成した波除け島は、港の南東部を扇形に囲い、波風を防ぎました。平家物語・巻第六『築島』では、「経ヶ島の造営は応保元年(1161年)に2月に開始されたが、その年の8月に突然の暴風と大波で島が揺り崩された」「応保三年(1163年)3月に『人柱を捧げるべき』と公卿の評定があった」と書かれています。また、「清盛の死後、その遺骨を清盛の側近が経が島に納めた」ともされています。
参考:兵庫県立歴史博物館 https://rekihaku.pref.hyogo.lg.jp/digital_museum/legend/story17/
尾崎士郎 訳『現代語訳 平家物語』
ミュージカル「淡路の月に誓う」
2023年7月1日(土)~8月27日(日) 各回14時00分開演
青海波 ”海の見える劇場”波乗亭(〒656-1723 兵庫県淡路市野島大川70)
問合せ:0799-70-9020
公演情報詳細は <こちら>